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終戦記念日、夏休みに。中学生におすすめしたい戦争の文庫本3選。

もうすぐ終戦記念日ですね。

 

偏見を持たずに、一から戦争の歴史を学びたい方へ。

私は昔から、太平洋戦争の歴史にずっと興味があり、わかりやすい本を求めて、いろんな本を読んできたのですが…。

どうしても、何かを決めつけているような主張や、偏りのある主張が前に出ている本が多いです。

「日本は悪くない」とか、「日本がすべて悪い」とか、「◯◯がすべての原因」だ、とか。

でも、いろんな本をたくさん読んできた身から言わせると、「誰か一人が悪い」「この報道機関が悪い」「この国だけが原因だ」なんてことは、ありえないと思うんですよ。

これまで何千年と、いろんな国がいろんな戦争をしてきて、そこにはあらゆる原因が複雑に絡み合い、影響しあって、そうやって世の中は動いてきたんですから。

それは、現在の社会だって、学校だって、会社だって、何も変わりません。

 

だからこそ、過去の人たちの一つ一つの行動が、どうやって関連していて、影響し合って、大きな戦争を巻き起こしてしまったのか。

そして、たくさんの人々が犠牲になっても、なぜ戦争を早くやめることができなかったのか。

こういう問いを、誰かを悪者にするのではなく、素直に考えながら過去の歴史に向き合うこと。

そうすることで、現在の私たちは、過去の歴史を未来の教訓に出来るんだと思います。

 

そこで、今回は、「何故、日本は太平洋戦争をしてしまったのか」という問いに対して、出来る限り冷静かつ偏りの少ない視点から、わかりやすく説明してくれる文庫本を三冊ほど紹介したいと思います。

あくまで「中学生におすすめの読みやすい本」ですが、「中学生向け」に書かれたものではありません。

大人の初心者が読んでも、きっとものすごく勉強になる、中身の濃い3冊です。

 

加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」

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こちらは、以前にも紹介した加藤陽子さんの一冊。

彼女が、高校生に講義をした内容をまとめて出版した本です。

もし、この講義を、塾や講演で全部受けようとしたら何万円もかかること間違いなし。

1000円以下で読めるなんて、本当にラッキーだと思います。

 

加藤陽子さんは東大の教授で、まさに太平洋戦争が起こるまでの歴史の第一人者です。

ひたすら地道に、「当時の人たちが残した史料をひとつずつ読み込んで、事実をひとつずつ拾い上げて、整理する」ことを続けている方です。

 

当時の日本人は何故、軍隊を支持したのか。

戦争反対派の人々は、何故大きな声を挙げられなかったのか。

どうして、負けるとわかっていたはずの戦争に突入してしまったのか。

そこには、当時の人々の暮らしや、政治に対する思い、戦争に大声で反対できない理由が、複雑に絡み合っています。

 

よく「政府が国民をだました!」「マスメディアが国民に嘘をついた!」といわれますが、そんな一言で片付けられるような、簡単なことではありません。

私たちと同じ、日常の生活を営む人々が、日常を大切にしようとして、その結果として戦争を選んでいた。

そこにはどんな理由があるのか、ぜひこの一冊を読んでみてください。

 

また、実はアメリカ大統領のルーズベルトが、戦争が始まる数日前に、天皇に対して電報を打っていた、など驚きの事実も出てきます。

そしてその電報が、戦争が始まる直前まで、何故か天皇に届かなかった理由も、ちゃんと信頼できる情報をもとに、教えてくれます。

最後まで、ページをめくる手がとまらない、おすすめの一冊です。

 

猪瀬直樹「昭和16年夏の敗戦」 

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都知事で有名になった猪瀬直樹さんの一冊。

都知事としての手腕については、いろんな評判があると思いますが…。

猪瀬さんは、元々作家で、この「昭和16年夏の敗戦」も都知事になるずっと前に刊行されたベストセラーです。

 

タイトルの通り、「昭和16年夏の時点で、日本は戦争に敗けていたんですよ」という内容。

実際に太平洋戦争が始まったのは、昭和16年の12月。

日本の真珠湾攻撃と、イギリスの占領していたマレー半島への侵攻によって、太平洋戦争が始まります。

でも、猪瀬さんは「昭和16年夏の時点で、日本は戦争に敗けていた」という。

実は、戦争の前に、政府が各分野の若手エリートを集めて、もし戦争をした場合に、日本は勝てるのかどうか、シミュレーションさせていた、という話です。

もちろん、すべて事実に基づいたノンフィクションです。

 

若手エリートは、「模擬内閣」として、「総理大臣」や「外務大臣」などのメンバーを決め、本物の内閣のように、会議を進めます。

彼らは、最新の情報や技術に精通した人たちなので、実際の情報を元に、様々な角度からアメリカとの戦争をシミュレーションします。

石油や鉄などの資源は、日本とアメリカでどのくらいの差があるか。

飛行機や武器の製造スピードは、戦争が始まったら、どう変わっていくのか。

適切なデータをもとに分析すると、日本が勝てる見込みはどのくらいあるのか。

 

そして、本物の政府を前に、昭和16年の夏に、「日本は戦争に敗ける」と報告をする。

それまでの過程を、当時のメンバーへのインタビューもたくさん含めて、描いています。

実際には、その報告の後、昭和16年の冬に、本物の政府は戦争に突入してしまうわけですが…。

当時の日本と、日本の政府が置かれた状況がよくわかる一冊です。

 

半藤一利「あの戦争と日本人」 

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「昭和史」といえば半藤一利さん、というくらい有名な半藤さんの一冊。

面白い本は他にもたくさんあるのですが、初心者の方には「あの戦争と日本人」がおすすめです。

じっくり夏休み中をかけて一冊読みたい方は、なんといっても「昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)」をどうぞ。

 

「あの戦争と日本人」では、日本人が戦争へと走っていった理由を、トピックごとにひとつずつ取り上げて、わかりやすく語ってくれます。

特にこの本をおすすめしたい理由は、「幕末史と日本人」、「日露戦争と日本人」という2つの章からスタートするところ。

日本で江戸幕府が倒れ、明治維新がスタートしたのが1868年

太平洋戦争が始まったのが1941年

江戸時代の終わりから太平洋戦争まで、たった73年間しかないんですよね。

江戸時代生まれの人が、太平洋戦争を経験しているわけです。

そのため、どのように江戸時代が終わって明治時代がスタートしたのか、その後の40年の間に起こった日清戦争日露戦争を日本人はどう思っていたのか、という問いは、太平洋戦争に深くつながっていきます。

その辺りを、とてもわかりやすく整理して伝えてくれます。

 

そして、他にも「八紘一宇と日本人」「鬼畜米英と日本人」など、「よく聞くけどよくわからない言葉」について、とても簡単な文章で教えてくれます。

「いったいなぜそんな思想が日本人に浸透したのか」という疑問が、

「ああ、こういう理由で、私たちと変わらない普通の人たちが、こういう言葉に親しみを覚えることになったんだな」と腑に落ちます。

初心者向けのとてもわかりやすい本です。

もし、この一冊が面白くて、半藤一利さんの他の本が読みたくなったら、昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)」、「日本のいちばん長い日」あたりもぜひ読んでみてください。

 

なぜ日本は戦争をしたのか、という問いに答えてくれる3冊。

ここで紹介したのは、初心者にもお勧めできる入門編の文庫本3冊です。

中学生でも、とっても読みやすい文章と分量ですが、内容は「教科書的」でもなければ、「小・中学生向き」でもありません。

初めから何かを決めつけることなく、当時の人々に寄り添って、一つずつの出来事をつなげてくれる、素晴らしい3冊だと思います。

読み終わってから、いろんなことが腑に落ちる一方で、「一言で戦争の理由を述べる」なんてことはできないんだ、もっと知りたい、と思わせてくれる3冊でもあります。

ぜひ、この機会に、自分たちの前に生きた人々に寄り添って、戦争と平和に、思いを馳せてみてください。

 

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