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読書録:「愛と欲望の雑談」(雨宮まみ 岸政彦)

最近はまっている岸政彦さんと、ライターの雨宮まみさんの対談本。

愛と欲望の雑談 (コーヒーと一冊)

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「コーヒーと一冊」というシリーズ名がついている、ミシマ社発行の手軽に読める薄いペーパーバッグにて発行されています。

 

まずは、とにかく、とても読みやすい。

対談なので言葉も平易でテンポよく進むし、題材も恋愛や家族や不倫など身近(?)なものなので、まるで居酒屋でお会話に参加しているような気持ちで読み進めることができます。岸さんと雨宮さんが、軽快な口調で自らの生い立ちや近頃ふと思ったことを披露しあい、突っ込みを入れて笑ったりして、読んでいるこちらは、気がついたら時間が経っていた、という感覚で読み終わってしまいました。

岸さんの「街の人生」を読んだあとということもあり、インタビューより対談のほうが圧倒的に読みやすい!!ということに気がつきました。(「街の人生」はインタビュー集です。感想はこちら

 

ただ、軽快で言葉が簡単で読みやすくても、恋愛や家族や不倫という事柄はそもそも軽快なものではないと私は思っているので、その話している内容は奥行きがあって、ふと考え込んでしまう場面もあります。

 

例えば、「しんどい競争と個人のしんどさ」「「持っている」ことをバカにする」というタイトルのおはなし。

岸さんが、自分は結婚して子供ができなくて苦しんだこと、そのしんどさを勇気を振り絞って生徒に語る。でも、「嫁自慢乙」という一言だけを残す生徒もいる(おそらくその人は本気でそう思っている)。

雨宮さんは、自分がどうにか生き抜いてきた過程をせきららに言葉にする。その中に、「そこそこ口説かれたこともあって」という一行があるだけで、「なんだよ自慢かよ」となる。

どうしても人は他者と比べることから逃れられない。なんだかTwitter上ではしんどさの度合いを争っているように見える。また、「特権を持っているから叩いてもいい」という風潮がある。貧乏でなくてお金持ちだから叩く、という風潮。

そんなものに対し、二人は違和感を披露しあったあと、「だけど、自分の個人的な悩みはいったん置いておいて、もっとしんどいところに追いやられている人たちがいるから、そこをもっと見ようっていうのも、それはそれで必要なんです。」と岸さんは言う。矛盾しているんですよ、と。ずるいような気もするけど、でもそういうことだよなぁ、と思う。

 

また、私が好きなのは、「ネガティブな気持ちを飼いならす」のおはなし。

ある男子学生に、自分の彼女がコンパに行くことが嫌で、でも相手を束縛したくないから言えない、と相談されたそう。

そこで岸さんが言ったのは、「コンパに行くなって強制する権利はないけれど、コンパに行ってほしくないという気持ちを伝える権利はある」と。

いやほんとうに。これは、誰かと一緒に生きていくためにはものすごく大切なことだと思う。「気持ちを伝えること」と「強制すること」は違うし、「相手を受け入れること」と「我慢すること」も全然違う。ちゃんと切り分けて人間関係を結んでいくのは簡単なことではないけれど、こればかりは少しずつ訓練をして、身につけていくべきと思う。

 

というわけで、岸さんと雨宮さんの相乗効果で、「実際の人間関係に役立つ本」になっているのではないだろうか。

しかも対談なので、押し付けがましくない。もしよかったら、ヒントをどうぞ、という感じ。

 

雨宮まみさんの「女子をこじらせて」も読んでみたいと思う。

 

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