読書録「戦後の短歌 <現代>はどううたわれたか」
毎日の生活で味わう不安や希望が閉じ込められた、秀逸な短歌たち
最近、毎日少しずつ読み進めている「戦後の短歌 <現代>はどううたわれたか」。
短歌集というものを一度も手にしたことがなかったのですが、祖母の愛読書だったと聞いて、思わず取り寄せました。
残念ながら絶版になってしまっており、Amazonにて古本が数冊販売されているのみです。
これまで、短歌というと、多くは恋愛をうたったものなのかな、というイメージが強かったのですが、この短歌集にて、印象が180度変わりました。
敗戦や引き揚げ、GHQ占領や日韓漁業問題まで、その時代ごとに人々が抱いた感情がうたわれた短歌を集めた一冊になっています。
混沌とした社会の流れの中で、毎日を生きていた人々がふと抱いた不安や希望。もやもやした感情やどうにもならない戸惑いのようなものが、たった31文字でうたわれているからこそ、その少ない言葉に押し込めきれなかった感情や、激動する時代の変化に、想像をどこまでも掻き立てられます。
「短歌文学は、いかにも壮大な思想を盛るには不適当であるけれども、しかし、庶民がそのときどきに味わう不安とか希望とかを簡潔に集約しうるという機能を持っている」(本書87ページ 「旧き制度の崩壊」より)
まさにその通り、と感嘆しました。毎日少しずつ、読み進めたいと思います。